Vol.35 「あざとさ」について
今年7月に放送されたテバラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)で、とある二人の芸能人の「あざとさ」が暴露されるシーンがありました。
一人目は、お笑いコンビ『オリエンタルラジオ』の藤森慎吾さん(38)。(この日に出演していた)お笑いコンビ『南海キャンディーズ』の山里亮太さん(44)の証言によると、
「たとえばテープチェンジのときに、技術さんの名前も覚えていて、(技術さんを)名前で呼んだりするとめちゃくちゃ気に入られて、(自分を)カメラで抜いてくれたりする。それをむちゃくちゃ駆使するとかって言ってた」
…のだそう。そして、二人目は、最近人気漫画『キングダム』の作者である原泰久さん(46)との破局があきらかになったタレントの「こじるり」こと小島瑠璃子さん(27)。(やはり、この日に出演していた)お笑いコンビ『ニューヨーク』の屋敷裕政さん(35)は、彼女について、こう証言しています。
(以前共演したとき)休憩中に「屋敷さん漫画、めっちゃ詳しいですよね? YouTubeで紹介しているの見ました。私も漫画大好きなんで、オススメ(作品)教えてください」と声をかけられた。そこで好きな漫画を勧めると小島は「聞いたことはあったけど、読んだことはない。滅茶苦茶面白そう」とリアクション。さらにそのロケが終了し、ロケバスを降りるときに小島のスマホをふと覗いてみると、さっき勧めた漫画を読んでいた。
「買いましたよとか何も言わないんです、逆に。もっと思い出したら、ロケバス最初に乗ったときに『ケータイとか覗かないでくださいよ〜』とか冗談で言ってた。『見るわけないでしょう』とか言って、それでかなりオレ、ほぐれたんですよ。そしたら帰りしなにポッとケータイ見たら漫画読んでて…全部伏線やったんちゃうかな…」(屋敷さん談)
さて。『あざとくて何が悪いの?』は、読んで字のごとく
「芸能界をはじめとし、ちまたに蔓延るさまざまな“あざとさ”を披露し合っては、それのどこらへんに文句があるの?」
…と、開き直ることを主旨とする番組です。ぼくも(一般的に)「あざとい」と形容される行為自体に「狡猾」だとか「いやらしい」といったイメージを抱くことは、まったくありません。「何が悪いの?」「どこらへんが問題で、どこらへんに文句があるの?」と、まずは一蹴しておきましょう。他人の「あざとさ」を深読みして、それをトークのネタにするほうがよほど悪質…ですよね?
藤森さんが「周囲のスタッフの名前をできるかぎり覚える」のも、こじるりさんが「オススメしてもらった漫画をその日のうちにダウンロードする」のも、すべては地道な“努力”に裏付けされている“ふるまい”であって、いずれにせよ「他人に喜んでもらうための細やかな根回し」を「あざとい」と呼ぶなら、それはむしろ称賛に値する“褒め言葉“となるのでは…とぼくは考えます。
仮に“ハプバー”で「あざとい」と感じるまで気配りに長けた相手があなたの前に現れたとしても、その一連の言動は、あくまであなたとの今宵限りの関係をより円滑に進めるための“努力”の成果──妙な詮索はせず、とりあえずはそんな一挙手一投足を心地よく受け入れるべきではないでしょうか?