Vol.81 ハプバーとサウナ(前編)
ハプバーでひと汗かいて、思う存分マインドも開放させてから、サウナでもうひと汗かきながらマインドを「ととのえる」──想像しただけでウットリ…もうヨダレが垂れるほどの黄金フルコースであることに間違いはありません。
ってなわけで、今回はサウナについて書いてみましょう。
いきなりではありますが、ぼくはハッキリ申して「サウナ初心者」です。
つい去年までは、サウナ室に5分以上こもることができなかったし、水風呂だって“苦行”以外の何物にも思えず、一度も足を浸けることさえできませんでした。しかし、ぼくが秘かに所属している某温泉同好会の、とあるリーダー格のメンバーから、
「サウナの醍醐味もわからん人間が温泉を語るべからず!」
…と(けっこう真剣に)叱責され、その日以降、何度かのチャレンジを経て、今ではサウナ室には15分くらいこもれるようになり、水風呂にも入れるようになったのです。
たしかに、サウナ室でじっくりと体を蒸したあとの「水風呂→外気浴」のコースは爽快このうえなく、
「こんなにも素晴らしい境地をこれまで知らなかったなんて…!」
…と数十年間、還暦間際に到るまで頑なに水風呂を拒絶し続けてきた自分に、とにかくひたすら後悔の念を抱くばかりでありました。
ただいっぽうで、“素人考え”として
「人間の体を高温から低温へと急激に環境変化させる行為」
…が、はたして本当に“健康法”として正しいのか…といった一抹の不安が、ずっとよぎりもしていたのです。
(公式の)「サウナ大使」の肩書きをも持つ鬼才クリエイター・タナカカツキ氏作画の『マンガ サ道〜マンガで読むサウナ道〜』(講談社)は、昨今のサウナブームを牽引したとされる名著ですが、この『サ道』は、どちらかといえば
「サウナで得られる“健康”より、サウナで感じる“恍惚感”」
…を重点に描かれたエッセイに近い作品であり、その一種のトランス状態をモノクロマンガという手法で、あそこまでサイケデリックにビジュアル化してしまうカツキさんの表現力には恐れ入るばかりではあるものの、“健康”に対する言及はさほど詳細ではない印象を受けます。
もちろん、それを批判しているわけでは決してなく、むしろ積極的なかたちで健康指南の要素を取り入れたマニュアル的なテイストを目指していたら、せっかくのカツキさんの持ち味を台無しにしてしまう、中途半端な自己啓発本へと成り下がった可能性もなくはありません。
『サ道』の2巻に登場する、サウナにハマった若くて仕事もデキる爽やかイケメンは、サウナ室で汗にまみれながら、こう語っています。
「僕は本来怠け者なんです。健康のためにサウナに来てるなんてとんでもない…ただ快楽を貪っているだけです」
つまりがそういうことなんでしょう。
(※後編へ続く)