Vol.149 ディスコ・カフェバー…そしてカクテル(後編)
ディスコ・クラブといった「大音量の音楽でダンスに興じるスポット」がデートよりむしろナンパに向いているのは、今も昔も変わりません。
そして、当時ディスコで奇跡的にゲットできたギャル(※当時は若い女性のことをすべてひっくるめて「ギャル」と称していた)
しっぽり関係をあたためるスポットだったのが
「カフェバー」です。
諸説ありますが、カフェバーブームのはしりとされているのは、1980年代初頭に西麻布でオープンした『レッドシューズ』。あと、人気を集めていたのは渋谷の『ソーホーズ』、表参道の『キーウエストクラブ』あたりで、オリジナリティを競い合う凝った内装と深夜営業を売りとし、ウブな大学生カップルからディスコでできあがった即席カップルまで…幅広い層の男女で連日賑わいを見せておりました。
「アルコールもコーヒーも軽食もケーキも楽しめる」スタイルは、悪く言ってしまえば中途半端でもあったのですが、その「なんでもあり!」なマルチ感と、「カフェバー」なる
健全と淫靡が絶妙に同居する耳新しい響きが、バブル前夜の空気にはマッチしていたのでしょう。
さまざまな経緯でここへと辿り着いたカップルたちの
下心と駆け引きが錯綜するカフェ風のバー(バー風のカフェ?)は、まさに「カオス」と呼んで相応しい独特のオーラがただよう空間でありました。
色とりどりのカクテルが世に出まわり、ポピュラーとなったのもちょうどこのころ。無論、大半の男がカクテルに込める目的は
「ギャルにモテること」、ひいては「酔わせること」で、見た目がオシャレだったり派手派手しかったり可愛らしかったり、口当たりがいいくせにじつはアルコール度数が高かったりするカクテルの情報交換が、男の間では「イケる」と、
ギャルの間では「危ない」との触れ込みで、活発に行われたものです。
たとえば、あくまでアダルトを気取りたいなら
「マティーニ」や「マンハッタン」。奇抜な色で攻めるなら「ブルーハワイ」か「メロンフィズ」、あるいは「バイオレットフィズ」。お酒があまり飲めないギャル用には、牛乳みたいに白くて甘い「チチ」も需要が高かった…と記憶します。
そして、「もう一歩踏み込んだ深い関係」を目論む男にとっての最終兵器だったのが、アルコール度数を容易に調整できた「スクリュードライバー」と「モスコミュール」。
あのマイケル富岡さんのような達人クラスが好んで注文していたという「ロングアイランドアイスティー」も忘れてはいけません。
思い起こせば、
「健康にいいから芋焼酎」
…なんてことを言い出す輩は一人もいませんでした(笑)。
ただひたすら「モテる」ため、すべての体力、知力、エネルギーを惜しげもなくギャルに注いでいたあのころの男たちは、目の前にぶら下がっているニンジンを遮二無二追いかけ、松田優作ばりのくわえ煙草で吐くまで飲みながら、ある意味マゾヒステックに己(おのれ)の身体を痛めつけていたのです。