Vol.245 なんでもかんでも「させていただく」?
とある総合情報系のウェブメディアが、
「させていただく」
…との丁寧語がやたらと乱発されている現状を憂う…みたいな主旨の記事を配信しておりました。
「させていただく」「させていただきます」の増加傾向はビジネスシーンどころか、テレビや国政の場ですら一般的になりつつある…と指摘する同記事の筆者は、政府の使用頻度がとくにここ10年で激増していると分析し、そのタイミングは、
「民主党の与党時代
(2009年〜2012年)と重なる」
……と提言します。その大胆(?)な仮説を裏付ける当時の事例の一部を、同記事中から引用させていただきましょう。(※正確には「引用してみましょう」?)
2009年といえば、民主党の鳩山由紀夫内閣が発足した時期です。筆者が違和感を覚えたのが、「代表を務めさせていただいております」(※正確には「代表を務める」)「質問させていただきます」(※正確には「質問します」、あるいは「質問いたします」)という国会答弁でした。
(中略)正義の味方の民主党が、国家予算のムダづかいをする役人を懲らしめる場面は印象に残りました。このときに多用されたのが「この事業は中止とさせていただきます」(※正確には「中止といたします」)でした。民主党は選挙という国民の負託を経て政権を奪取しました。「政治家は言葉が命」といわれますが、(結果としては)言葉を安易に捉えすぎていたように思います。
「言葉のプロ」であるはずのテレビのアナウンサーでも、たとえば料理番組で、
「それではいただかさせていただきます」(※正確には「それではいただきます」)
「いまから召し上がらさせていただきます」(※正確には「遠慮なく頂戴します」)
…なんて風な、いかにも不自然な二重敬語を平気で使っている(※2つめにいたっては日本語としてもおかしい?)──そんな風潮を嘆く同記事の筆者は
最近、スマボで文字を書くことが多くなったせいか、意味不明な言葉や非礼な文章が増えたように感じています。この機会に、「大人にふさわしい文章力」を身に付けたいものです。
…と、美しい文体で記事を〆ています。
ここ『アグリーアブル』にコラムを毎日寄稿しているぼくも一瞬ドキッとさせられる、「我が振り直す」にはちょうどいい内容の読み物でありました。
念のため、過去のコラムをざっと読み返してみると…少なくともここ数ヶ月くらい、「させていただく」の誤用は…おそらくなかった…気がする。ホッとしましたね〜! こう見えて、そこらへんはけっこうデリケイトに注意を払っている(つもり)なんです(笑)。
ただ、多くのヒトが知らず知らずのうち「させていただく」に、ふと頼ってしまうその心情はチョッピリわからなくもありません。
「とりあえず、言葉を“より”丁寧にしとけば、上下が発生する人間関係も円滑になるし、人様からお叱りを受けることもないだろう」
…といったディフェンシブなメンタル作用がおのずとはたらき、つい二重にも三重にも丁寧語を重ねてしまうのでしょう。
“ハプバー”においても、
「最初のコミュニケーションは
やさしく丁寧に…」
…といったテッパンのマニュアルがあることから、
「これからプレイルームへ
一緒に行かさせて
いただきませんでしょうか?」
…なんて風な、過剰な丁寧語は横行しているのかもしれません。
先にも言いましたが、そのレディファースト的な謙譲の気持ちはとてもよくわかります。が、イザそういう「あと一押し」なシチュエーションに出くわした場合は、やはり男らしく
「これからプレイルームへ
一緒にいかない?」
…と、フレンドリーなタメ口で攻めてみるべきだと思うのですが…いかがでしょう?