Vol.107 ハプバーは鍋料理?
今年もいよいよ鍋料理が恋しくなる季節がやってきました。なんで「いよいよ」と待ち遠しい感じなのかと言えば、「鍋」はぼくがもっとも得意とする料理の一つであるからにほかなりません。
ところが! ちょっと前にアップしたコラムでも申したとおり、
「こいつ料理ヘタそう…と思われる自称・得意メニュー9パターン」
の一つとして「鍋料理」が挙げられておりました。
理由は「ほとんど下ごしらえだけで済みそう」だから。たしかにそう指摘されてしまえば、返す言葉もありません。たとえば、究極のシンプル鍋料理である「湯豆腐」なんかは、昆布で出汁をとった湯に豆腐を切って入れるだけ…ですが、つけダレの調合や薬味のチョイス、それに豆腐を湯から上げるタイミングに、ぼくならではの“秘伝”がある、意外と奥深い料理だったりするのです。
ちなみに、真夏でも独りでもスキあらば鍋ばっかつくって食っている、ぼくの脳内レシピに刻まれている「自慢の鍋料理」をザッと羅列してみたら、
・割り下を使わない「関西風すき焼き」
・「すくうタイミングが命!」の「京風湯豆腐」
・彩り鮮やかなピリ辛つけダレの「タイ風しゃぶしゃぶ」
・ガラを丸ごと一日煮込んだ濃厚「鶏の水炊き」
・女子に人気のヘルシー「塩こうじレモン鍋」
・力士直伝の「塩胡椒キムチちゃんこ鍋」
・なかなかミルフィーユ風に盛り付けできないけどw絶品な「豚肉白菜鍋」
・山の幸だけでつくる「5種類のきのこ鍋」
・隠し味はハマグリ!? 薄口鳥南蛮うどんすき
・大根おろし・ざる豆腐・白ネギ・胸肉…ほか、白い具材だけでつくる「白鍋」
・石狩風酒粕入りみそ味ラーメン鍋
・マグロのつみれがポイントの「ねぎま鍋」
・たくさんの千切り野菜を豚肉で巻いて食べる「ぶたしゃぶのシャキ鍋」
・既製のスープを使わない本格派「豆乳鍋」
・スープを濁らせない「ブリと生ワカメの潮しゃぶしゃぶ」
・〆が絶品の親子丼にもなる鶏すき焼き
・『失楽園』気分が満喫できる「蕎麦しゃぶで〆る鴨とクレソンの鍋」
…と、まあこんなところなのですが、控えめに言って、
まだまだ全然書き足りません。
そして、これら一連の
「キャッチフレーズ付きの鍋料理名」をプレゼンテーションすれば、
「うわ〜食べたい!」ってことになり、実際に11月〜2月あたりのぼくは、あちこちで開催される鍋パーティへと引っ張りだこな“人気者”となるわけですが、ここで着目しておかねばならない注意点が一つあります。それは、
「具材の買い出しを他人に任せてはダメ!」
…ということ。一度、広島の知人から大量の牡蠣をいただき、「みんなで牡蠣鍋をしよう」って話になったんですけど、具材の買い出しを他のメンバーに任せてしまい、うち一人がキャベツを買ってきて、その独特の強い甘みがスープの味を大きく左右し、せっかくの美味しい牡蠣が台無しになってしまったことがあるんです。長年の試行錯誤を経て(自分の)理想へと行き着いた具材のバランスは必ず死守すべき! 一人で具材購入すべてを引き受けたほうが、後々ワリカンにもしやすいし(笑)。
さて。そんなことんなとお話ししていたら、もしかすると
「鍋料理」とは“ハプバー”に似ている部分が多いのではないか
…という気がしてきました。
「どこらへんが?」と問われれば──仮に「鶏の水炊き」を例にすると、
鶏肉・白菜・白ネギ・しいたけ・くずきり…みたいに一見、個性が全然違った具材(=ヒト)が、一つの同じ鍋(=ハプニングルーム)でごった煮にされて、でもその個性のぶつかり合いが相乗効果となってお互いの美味しさ(=エクスタシー)を120%のかたちで引き出していく…。
ただし、先述した「牡蠣鍋のキャベツ」のような“場にそぐわない”ヒトが混じってしまったら、その鍋料理(=コミュニティ)はタチマチしょっぱい結末へと…。
「キャベツのようなヒト」とは具体的にはどんなヒトなのか、ここでは明言しませんが、そんなクセの強いヒトでも「もつ鍋」的なコミュニティに混じれば…白菜よりも断然といい仕事ができるに違いありません。なんのこっちゃ(笑)?