Vol.159 カツカレー論争
残念ながら(?)ここ『アグリーアブル』にはない食事メニューである「カツカレー」について、予備校講師でタレントの
林修先生が展開した持論が、ちょっとした物議を醸しているそうです。おおよそでは、
昨年11月28日に放送された『日曜日の初耳学』(TBS系)で、飲食店プロデューサーの稲田俊輔氏にインタビューした林先生──稲田が
「カツカレーは1+1=1.5程度にしかならない」
…と評すると、林先生もその意見に賛同。「カツが美味しいお店だからといって美味しいカレーがつくれるわけではないし、カレーが美味しいお店がカツを美味しく揚げる技術をもっているわけではない」とし、
「カレーとカツは別々に食べたい」
…と結論づけた。
…みたいな内容であります。そして、この林先生の発言を受け、ネット上では、
「カツカレーは日本人の最も偉大な発明の一つ」
「ルウが染み込んでフニャついた衣のトンカツをガブッと行くのが好き!」
「カツカレーは1以下のカレーと1以下のカツを合わせることによって1.5にする神料理だぞ!」
…ほかの反論がカツカレー原理主義者から年(とし)をまたいで続々と寄せられている…とのこと。
当然ながら(?)、ぼくも「カツカレー」は大の好物で、個人的には“トッピング”する「カツ」はチキンカツが一番好きなのですが、まあ、カツならトンカツでもビフカツでもなんでもかまいません(※ただし白身魚だとか牡蠣だとかの魚介系は×)。
たとえば、とあるカレー屋さんでカツカレーを注文したとして、その品の上には六切れに分割された、まだカレールーに侵食されていない
真っ新なトンなりチキンなりビーフなりのカツが乗っていたとしましょう。
そんなとき、ぼくはまずカツ全体に薄くウスターソースをかけ、最初の一切れ(※だいたいは右端か左端の半円形になっている部分です)を純粋に「カツ」として楽しみます。
次に、もう一方の半円形になっている部分一切れとその隣にある二切れの計三切れにカレールーをソースとしてかけ、そこにライスを添えながら口の中でこれら3つの味と食感を合体させるような、どちらかと言えば個別的な格好で「カツカレー」をじっくりと吟味します。
そして、最後の二切れは皿の上でカツとカレールーとライスを、スプーンを使ってパリッとしたカツの衣が完全にしなしなになるまでぐちゃぐちゃに混ぜ、村上春樹センセイの小説とかに出てきそうな、まるで井戸あたりに閉じこもって現実と非現実の境界線を失い彷徨(さまよ)う主人公のごとくに形而上的な恍惚感へと入り込んでいくのです。
もちろんのこと、これこそが
「正しいカツカレーの食し方!」
…だと声を大にして主張する気なんぞ、さらさらありません。林先生がおっしゃるとおり、「カレーとカツは(個々を純粋な料理として)別々に食べたい」という心情も十分に理解はできます。
もう少々ネットサーフィン(←死語?)に時間を割いてみると、
「結論がしっかり出せる事じゃないのに、
なぜここまで熱くなっちゃうのか?
そこが不思議です」
…なんて風な主旨のコメントも複数見られましたが、このような「結論がしっかり出せない不毛な議論」を真剣に延々と、ある意味“長閑(のどか)”に、牧歌的なかたちで戦わせることこそが、
インターネットにおける正しい“炎上”の仕方
…だとぼくは考えるのですが、いかがでしょう?