Vol.161 注文の多いハプバー?
最近、やたらいろんな規制がある、たとえばカフェとかが激増していると聞きます。
「カフェで電話するな」
「カフェで会話もするな」
「カフェで喫煙するな」
「カフェで勉強するな」
「カフェでパソコンを使うな」
…といった具合です。そして、
「カフェでよく仕事を
しているGジィさんも、
こういう不寛容な風潮って
げんなりしませんか?」
…などともよく話題を振られたりもしますが、念のため指摘しておくと、ぼくは「カフェ」では滅多に仕事はしません。ぼくがいつも
ノマドっているのは、あくまで「喫茶店」であります。
出てくるのはドリップで一杯一杯丹念に炒れてくださるサードウェーブな珈琲ではなく、サイフォンによって抽出された昔ながらの、どちらかと言えばファーストウェーブチックな濃い~珈琲──濃厚でコクがあって(ありすぎて?)、シュガーやフレッシュ(←関西弁?)を入れても負けない味で、ドリップ方式と比べれば
「珈琲が冷めない」というメリットもあるそうです。
で、この手のレトロな喫茶店は客層もさまざまで、
「延々スマホで“訴訟”やら“差し押さえ”やら“自己破産”やら“夜逃げ”やらの物騒な単語が漏れ聞こえてくる会話を大声でするジャンパー親父」
…だとか、
「ゆうに百万はある札束数束を指にツバをつけて数えているスキンヘッド&体重100㎏以上確実のヤクザさん(しかもそのうちの数枚かを席に忘れていったりもしていた)」
…だとか、
「10人ほどの若者を集めてなにかの勧誘に精を出すオバチャン」
…だとか…と、想定をはるかに超えた掟破りなヒトたちもたくさんいるので、安心して自由に振る舞えます。コーヒー一杯で3時間も5時間も粘り、パソコンに向かって仕事をしたり勉強したりするくらい、どうってことないわけです。
もちろん「禁煙」や「分煙」なんて概念もあるはずもなく、ぼくが行きつけにしている某恵比寿の喫茶室ル◯アールなんかは、入店してくるお客ひとり一人に
「ウチはオール喫煙ですが」
…と店員さんが“確認作業”を行っております。
そうですか…「喫茶店」と違って「カフェ」は今、そーいうことになっているわけですか…。
たしかに、ご時世がら致し方ない禁止事項もいくつか混じってはいる──味や接客態度以前に「お洒落」であることを至上命題とするカフェにおいて、経営者サイドがつくりあげる“空気”を重視するのはわからなくもありません。
さらに、当然の事ながらカフェがイメージする「お洒落」は店ごとにコンセプトも精度も千差万別であり、となればカフェ側がお客側に求める“資質”に対する許容範囲も、やはり当然の事ながら“まちまち”となってくるわけで、ラーメン二郎の話ではないけれど「店側にもお客を選別する権利がある」って理屈もまかり通ることになります。
それはそれで経営者サイドの自由なので、別にかまいません。たとえば「禁煙」を唱うカフェは「喫煙者」という客層を切り捨てて、身を削って「無煙の店」を貫き、嫌煙家層を取り込んでいるのだから、一つのビジネス戦略としては立派に成立していると言えましょう。
でも、「会話するな(電話するな、はまだしも)」「パソコンするな」「勉強するな」……と、まるで宮沢賢治の
『注文の多い料理店』のごとく、なんでもかんでもNGにしちゃうってえのはいかがなものか?(※ただし、冒頭写真にあるような「トイレの使い方」の禁止事例は、さすがに当たり前だと思いますw) じゃあ、一体そのカフェではなにをすればいいのか?
「読書」も大きく解釈すれば「勉強」なんですから、黙々と腹もふくれない五穀米が自慢のランチプレートを食いながら、店内に置いてあるヴ○ーグやらオー◯ャンやらのつまらない雑誌かスマホを眺めるしかないのか?
そこに美意識が合致するなら、どうぞご自由に…常連サンとなっていただければけっこうです。「不寛容な世の中」にはむしろマッチする風潮だったりもしますしね?
ただ、ぼくはそういう「注文の多いカフェ」より、前出のような胡散臭さ満点の人たちをも広く包みこむ「寛容で猥雑な環境」に身を置くほうが、ずっとイマジネーションも刺激されるのであります。漏れ聞こえてくる話が面白すぎて、ときに仕事に集中できない…という両刃の剣的な側面も否定はできないのですが…(笑)。
さて。「注文の多い〜」とくれば、ここ“ハプバー”もなかなかに「注文の多いお店」の部類に属するのかもしれません。
「スマホは持ち込み禁止!」
「連絡先の交換も禁止!」
「録音は禁止!」
「撮影も禁止!」
「個人での金銭のやり取りも禁止!」
…エトセトラ・エトセトラ…。
しかし、“ハプバー”のような、いろんな面でデリケイトなスポットは(カフェなどと異なり)、おのずと禁止事項が増えてくるのは当然! それらを順守できない輩たちは、街で勝手にナンパでもしといてください…ってことなのです。