Vol.247 前世は蚊!?
とある男女混合の飲み会で、初対面の真っ黒な髪が腰ほどまである女性と、たまたまとなり合わせになりました。
しばらく雑談を交わしていると、どうやら彼女は人の「前世」が見えるのだそう。
過去にも一度、そういうことを言う、職業は占い師だとうそぶく初老の男性にスナックだかバーだかでぼくの前世を見てもらった記憶があります。
そのときは、たしか
「あなたの前世は
ミケランジェロの
二番弟子です」
…なんて風なことをおっしゃってくれました。悪い気はしませんでした。
これが仮にミケランジェロ本人だったりダ・ヴィンチだったり…あと、坂本龍馬だとか蘇我入鹿だとかイワン雷帝だとかの歴史的な著名人だったら、あまりに嘘くさい。かといって、源氏に追われて山奥で餓死した平家の落武者だとかフランス革命で車裂きの刑に処せられた平民だとかも微妙だったりします。
そう考えれば「ミケレンジェロの二番弟子」っていうのは、リアリティのバランス面でもなかなかに優れた(※とくに「二番」というくだり!)、さらには相手(=ぼく)の好奇心と射倖心をくすぐる、おもてなし感に満ちた最高の回答だったのではないでしょうか。
で、話は戻って……たまたまとなり合わせになった、初対面の真っ黒な髪が腰ほどまである女性です。当然のこと、ぼくは場を持たすために
「じゃあ、
ボクの前世も見てくださいよー」
…と彼女にお願いします。
さすがに、また「ミケランジェロの二番弟子」とピッタリ合致した回答を得られるとまでは思っていませんでしたが、せめてそれに近いようなヒトだったらいいな…程度には期待していました。
真っ黒な髪が腰ほどまである彼女は、
「わかりました」
…と、目を閉じて瞑想に入ります。そして30秒くらいは経ったのでしょうか、その彼女はいきなりカッと目を見開き、私にこう
告げたのです。
「あなたの前世は蚊です」
「はい???」
「だから、前世は蚊です」
「“か”って…夏にぷう〜んぷう〜ん飛び回っている蚊のことですか?」
「はい。ぷう〜んぷう〜ん
飛び回っている蚊のことです」
「あのぉ…人間の前世が人間じゃないってこともあり得るんですか?」
「はい。しょっちゅうあり得ます。
生き物だったらなんでもアリです」
「そうなんだ…じゃあ、ボクの前世が本当に蚊だったとして、蚊の習性とかは今のボクの性格や人生にも乗り移ってくるわけ?」
「ある程度の影響はあるでしょう」
「蚊みたいな性格や人生って具体的にはどんな感じなんですか?」
「そこまではわかりません。
自分で考えてください」
「人のまわりをぷう〜んぷう〜ん飛んでて、いきなりパ〜ンって平手で叩き潰されたり、フマキラーをプシューってされてコロっ…みたいなな死に方をする…とか?」
「それも否定はできません」
「……………………」
もしかすると、新手のものすごく遠まわしな
「アナタのことには興味ありません」サイン
…なのかもしれません。万が一ここ『アグリーアブル』で、うざい男性客に蚊のごとくしつこく付きまとわれてしまった貴女は、ぜひ一度この前世ネタをお試しください(笑)。