Vol.511 【ハプバー会話術】阪神岡田監督の「おーん」
昨年末、我が愛する阪神タイガース球団が発表した今年2023年度のチームスローガンが、
「A.R.E」
…だと聞いたときは、マジ度肝を抜かれ、思わず自分の耳を疑ってしまった次第で御座います(笑)!
ローマ字読みするところの
「アレ」
…とは、このたび阪神タイガースの監督に二度目の就任を
果たした岡田彰布氏の口グセの一つとして有名なのは、もはや説明するまでもないでしょう。
(昨年)11月26日に甲子園球場で開催されたファン感謝デーでも、約3万8千人の観客を前にした就任あいさつで、
「選手全員の力を結集して『アレ』に向かってまい進します!」
「シーズンで『アレ』を勝ち取って、一年後、またこの場所で『アレ』の喜びを(ファンの皆さまと)分かち合いたいと思います」
…と、怒涛の「アレ三連発」で、なんとなく(?)「優勝」を誓い、日本全国のトラ党が歓喜に包まれたのは、いまだぼくの記憶にも鮮明に刻み込まれております。
ただし、正確な読み方は
「えー・あーる・いー」
…であるそうで、
「個人・チームとして明確な目標『Aim!』に向かって、野球というスポーツや諸先輩方に対して敬いの気持ち『Respect』を持って取り組み、個々がさらにパワーアップ『Empower!』することで最高の結果を残していく」
…といった意味が込められていると言います。
こじつけ感満点の、じつに苦しい言葉遊び
ではあるものの、
「関西人の商魂たくましさ」
…には、あらためて舌を巻いてしまいましたよ(笑)。
岡田監督本人も
「いくつか候補はあったんやけど。まぁアレって(オレも頻繁に)言ってるから。語呂もええし」
…とニヤリ笑いながらイチ押しした……との噂も、
まことしやかに流れております。
さて。この「アレ(A.R.E)」とともに今年、(少なくとも野球ファンのあいだでは)大ブレイクしつつあるもう一つの岡田監督の口グセとは…ハイ! そのとおり!!
「おーん」
…であります。野球に…阪神タイガースに
イマイチ明るくない皆さまに向けて、
念のためその実例を以下に記しておきましょう。
「最初ちょっとなあ、ランナーは出るけどタイムリーは出んかったけど。まあポーンとな、誰かそこで突破口開いたら、やっぱりビッグイニングになるということやなあ。おーん」(※今年8月1️日、対ドラゴンズ戦に勝利した直後の囲み取材で「(3番の)森下(翔太選手)がいいところで打っている」と振られた際の回答)
「理想はだって一年間ローテーション守ってな、おーん。そら当然2桁でな。貯金つくれるピッチャーやで、開幕も、そやなー、
おーん」(※「開幕投手の理想像は?」と質問された際の回答)
「今年だけやろ。しゃあないけど、今年はな、おーん、なあ、
おーん。だから3キロぐらいやせてたわ」(※昨年に「今年のオフは岡田監督もお忙しかったでしょ?」と労われた際の回答)
相も変わらずのリズミカルかつ破壊力抜群なトークであります。ただでさえ岡田監督の会話内容は、音声で聞いても
解読難度が相当高いのに、あらためてこう活字に起こしてみると…なにを言っているのか、さっぱりわかりません。
ちなみに、「おーん」の発音は「お」にアクセントをつける。あと、「お」と「ん」の間は「〜」みたくあまり揺れない。したがって「―」が正解なのです。
一昔前だと、スポーツ新聞も夕刊紙も「おーん」を抜いたのち、それなりに意味が通じる文章に通訳していましたが、最近は「おーん」をイキにした、いわゆる
「まんまな原稿」
…がスタンダードになりつつあります。
「読みやすさ」よりも
「面白さ」を取った
…ってことなのでしょう。
この「おーん」の正体とは──とどのつまりが
「〜だね、うん」
「〜だと思うよ、うん」
「〜ですね、はい」
「〜でしょう、ええ」
…などのしゃべり口調の
「うん」
「はい」
「ええ」
…に該当するもので、岡田監督の場合は(おそらく)「うん」がいささか間延びしたような格好で「おーん」に聞こえてしまう…のだと推測されます。そして、こうした
「会話中、
無自覚につい
多用してしまう口グセ」
…のようなものは、なにも岡田監督だけではなく
「しゃべりのプロ」であるアナウンサーや
タレントのような職に就く者以外の誰もが、
矯正されないまま一つや二つ持っているものなのでは
ないでしょうか。
たとえば、ぼくは…あらためて自身のベシャリを振り返るに、
「もう」
「そりゃ」
「そんなん」
…という単語をやたら多用しがちなフシがあったりします。緊張すればするほど、熱くなればなるほど、無意識のうちに
口グセとして連発してしまうのです。
あと、サッカー日本代表だった吉田麻也選手をはじめとする多くのアスリートが、ヒーローインタビューなどで接頭語
として頻繁に口から漏らしがちな
「そうですね〜」
…も同様です。
もし、なにかのきっかけで
「自身の会話をチェック」
…できる機会に恵まれたならば…一度そこから
「不必要な口グセ」
…をピックアップし、それ(ら)を
省略してしゃべる訓練をしてみることを
オススメします。
そんなちょっとした気配りだけで、アナタのトークはここ“ハプバー”においても、うんとブラッシュアップされ、すっきりするに違いありません。
もちろん、岡田監督みたいに、
「その口グセがゼニになるレベル」
…の「面白さ」を秘めているレアケースは除いて…
なのですが(笑)?