Vol.595 【ハプバーで語りたいGジィさんの想い出話】モテマニュアル
ぼくがまだ若かりし30代のころ、
隔週で発売される10〜20代男性向けの
「某総合情報雑誌」
…の制作・編集業務に携わっていたことがあります。
その雑誌は
「とにかく
女子に
モテたい!」
…という、その一点だけにベクトルを向け、
ファッション・カルチャー・グルメ・デート術…
そしてSEX指南までを
「徹底マニュアル化」
…した、80年代から90年代にかけて、
(特集によっては)100万部以上の売り上げを
弾き出すほどの勢いでありました。
ぼくはおもに
「恋愛&SEX特集」
…を担当していたのですが、
評論家の大宅壮一氏が遺した『大宅文庫』あたりで、
その雑誌のバックナンバーにザッと目を通せば…
ぼくの本名がいくつもクレジットに掲載されており、
ページ総数にして千頁近くもつくっていると…、
いろいろな想い出話も少なからずこぼれ出てくるものです。
「オレのカノジョを無断で雑誌なんかに出しやがって!」(←※註:「カノジョ」本人には了承済み)と暴走族の彼氏にバイクで追いかけられたり…
某マンションの屋上で、野外Hの撮影をしているとき、隣のビルのサラリーマンに「ガンバレー」と手を振られたり…
男女がパンイチで性交しているシーンの撮影で、女優のハミ毛チェックに没頭するあまり、男優の金玉がハミ出ているのを見落としてしまい、そのハミキンがそのまま掲載へと至ったり…
…etc.と、今となっては
微笑ましい(?)エピソードが目白押しで、
懐かしさのあまり、つい含み笑みすらこぼれてきます。
より読者の皆さまに親近感を持ってもらうため、
基本的には素人と、はてしなく素人に近い読者モデルが
誌面ビジュアルの大半をしめていたのも、
その雑誌の大きな特徴でした。
当時ペーペーだった、現在では大御所クラスの
タレントやアーティストが、(半)素人として、
「木村◯哉クン」
「反町◯史クン」
「GL◯YのT◯RUクン」
…みたく、カタカナの「クン」付けで紹介されていた
のも、あらためて見直してみると…ある種の感慨深さで
胸がいっぱいになったりもします。
その雑誌のなにが凄かったかと言えば──まだ出版業界に追い風が吹き荒れていた時代背景もあってか、このご時世では信じられないような予算を頁(ページ)づくりに注いでおりました。
たった2ページの見開きに単体クラスのAV女優を…
しかもパンティ有りの手ブラ(=乳首見せ無し)状態で、
一気に7人もご登場いただいたことだってありました。
おそらく女優さんたちのギャラだけでも
「50万円」
…は下らなかったのではないでしょうか。
インターネットなんて無かった時代なので、
「リサーチ」
…も原則としては街頭アンケートや読者のおたよりから集計する…といった地道な作業に頼らざるを得ませんでした。
しかしいっぽうで、そうやって束ねた膨大なデータを
ただ機械的にまとめるだけではなく、その中から
「唐突な少数派の意見」
…をピックアップしたりもしていた──
誤解を恐れずに申すと、
「(統計的には?)
間違っていても
面白けりゃいいや」
…的な寛容さとアグレッシブな姿勢があったのです。
そりゃそうでしょう。ほぼ
毎年同じ時期に同じ特集を組んで使い回ししていた
ので、こうでもしなきゃ
「鮮度を維持」
…することができませんから(笑)。たとえば、去年には
「仮性包茎は手術しなさい!」
…と書いていたのに、今年は
「(仮性)包茎は
手術せずに
その(フォルムの)
プリティさを
アピールせよ!」
…みたいに、いけしゃあしゃあと断定してしまうような
前言撤回も日常茶飯事!
(※ちなみに、↑の企画は、包茎手術の広告を出校していた美容整形外科からのクレームを恐れる広告部から猛烈なストップがかかってしまったのですがw)
「手のひら返し」
…に対する罪悪感も躊躇もまったくありませんでした。
「トレンドは
常に動いてるのだ!」
…と、いつも自分に言い聞かせながら、喫茶店や
オシャレ系女性ファッション誌編集部の横とかで、
周囲の白い目をよそに、
「『アダルトな性教育』なる企画における
女性器の生々しくない表現法」
…だとか…
「アンダーヘアがヘソまで繋がっている女性の股間は
どこまでモザイクをかければいいのか?」
…だとか…
「『クンニリングス』を伏せ字にするには、
どの文字を『◯』で隠せばいいのか…
いっそ伏せずに “まんま” でイッちゃうべきなのか?」
…だとか…
「男性器を『チン◯』と記載する場合、
『◯』の部分は『ポ』がいいか『コ』がいいか…
あるいは『チン』がいいか?」
…だとか…
「体位の特集で当局のお咎めを受けないよう
デッサン人形をカラませてみてはいかがだろう?」
…だとか…と、イイ大人がツラをつき合わせて
大真面目に議論していたわけです。
それしても…一時期はここまで
「男女の機微
についての
マニュアル作成」
…に、あらゆる知恵を振り絞ってきた
Gジィさんであるにもかかわらず…いまだ
「いざ自分の
ことになれば
ほとんど活かされて
いなかったりする」
…のは、ちょっぴり残念だったりもします。
『ゴルゴ13』のごとく、おのれを完全に
「第三者の視線」
…で見つめることなんぞ、
「凡人には到底不可能」
…ってことなのでしょう(泣)。