Vol.350 ハプバーに行く前、また職質されてしまった件について
もう5年前ほども前の話だったでしょうか…?
『オタク川柳大賞』という公募型川柳コンテストで
「君の名は」
聞いてくれたの
ポリスだけ
…なる作品が大賞を受賞したことを鮮明に記憶しています。
「オタク特有の挙動不審は
職質に合いやすい」
…といった理不尽と悲哀を、たった17文字で、あのかつての人気アニメ映画名をも取り込みながら表現した傑作である…と、思わず当時は唸り声をあげてしまったものでした。
でもしかし! ワタクシGジィさんも、こと
「職質」
…に関しては、オタクの皆さまに負けず劣らずの猛者だと自負させていただきましょう!
なんせ、生涯通算で職質に合った回数は、じつに20回以上!
たしかアラブの某国から千人単位のVIPが来日した時期には、バットケースを背負って草野球の試合に向かう際、神宮球場周辺を歩いていると、スナイパーと間違えられたのか、野球道具が詰まったリュックの中はあっさりスルーされ、バットケースのみをお巡りさん二人に調べられたこともあります。
「おそらく90%前後の日本人男女が
一度も職質されないまま死んでいく」
…現実から考えるに、尋常ではない(被?)打率なのではないでしょうか。そして! つい先日の夕暮れどきにも
例年に漏れず(?)、まさしくここ『アグリーアブル』に向かう直前、新宿駅東口付近を歩いていると…またまた職質を受けてしまいました。
その日、ぼくが着ていたアウターは(今日のコラムのサムネール写真にある)ポケットが計24個装着されているのが自慢の、アパレル関係者からギャル…まで、多くのヒトたちから
「特殊部隊みたい!」
…と褒め称えられてきたイッセイ・ミヤケのフライトジャケット。たしかに
「さあ!職質してください」
…と言わんばかりの怪しさ満点なファッションであることは認めざるを得ませんが、ここは日本最大の繁華街・新宿──
この程度の怪しさを発散させる人物は山ほどいる…のに、そんな有象無象のなかから、なぜあえてGジィさんをピックアップ?
一度、警察関係に詳しい某新聞記者さんに
「職質に合いやすいタイプ」
…についてたずねてみたところ、どうやら以下のような
チェックポイントがあるのだそう。
(1)「季節に合わない」「年齢に不相応」「フォーマル系の服なのに靴だけがカジュアル」など、服装のバランスが悪い
(2)パンパンのリュックを背負っている
(3)顔付きが中東系
(4)オタクっぽい
(5)うつむき加減&猫背で歩いている
なるほど、指摘されてみれば(1)~(3)なんかは
典型的なぼくだったりします(笑)。
さらに、声をかけられるのは決まって仕事で大きなトラブルに見舞われたり、パチンコで絶望的な爆負けしてしまったりして、(5)のうつむき加減の猫背で呆然と街を彷徨っているとき、すなわち、自暴自棄になっていて、明らかにマインドが
「失踪」だとか「首をくくる」だとか
「コンビニ強盗」だとか、警察のごやっかいになる方向へと近寄っているときなので、職質をする側の洞察もあながち外れてはいないわけです。
とは言え、この日のぼくは仕事で大きなトラブルを抱えていたわけでもなく、パチンコで爆負けしたわけでもなく、
これから“ハプバー”に行くぞ…と、むしろマインドはウキウキ気味であったにもかかわらず──こういうケースは
「職質マスター」
…で馴らすGジィさんとしても、けっこう珍しかったりします。
声をかけてきたのは身長190cm近くはあろう、坊主頭でプロレスラー張りにガッチリした体型で、グレーのジャンパーを羽織り、カーキ色のチノパンツをはいた、年の頃は40代くらいの
いかついおじさんでした。マスクを着用していて眼光もやたら鋭い。
一瞬、目が合ってしまい、あまりにおっかなかったので、無意識的に踵を返して早歩きしちゃいました。すると
「ちょっと待ってくださ~い」
…と、呼び止められて…。思わず駆け足で逃げるぼくの前にガッと立ちはだかり警察手帳を差し出される。そのとき胸によぎったのは
「ああ、よかった…警察のヒトで」
…という安堵感でした。
結局、バッグの中身から財布、さらには24個ある
イッセイ・ミヤケのジャケットのポケットひとつ一つを徹底的にまさぐられ、20分近くの無駄な時間を費やしてしまったわけですが、
「はい。大丈夫です。
お忙しいところ
すみませんでした~」
…とお別れする間際、念のため、ある素朴な疑問を投げかけて
みたのです。
「なんで、ぼくだったんですか?」
…と。回答はこうでした。
「だって、アンタ逃げちゃうから」
普通逃げるっしょ! 2メートル弱ある坊主頭でマスクの男に
メンチ切られたら(笑)。
過去には、キャップとスニーカーにダボダボのジーンズを腰履きでキメた、いかにもチャラいB-BOY風のアンちゃんに警察手帳を突きつけられたこともありました。
仕事上、極力警官っぽく見えないよう凝った変装をするのは仕方ありません。
けれど、人の怪しさは棚に上げといて、自身の怪しさに対し無頓着すぎるのもどうなのよ…と、ぼくは一言だけ、当局サイドに忠告したいのでありました。