Vol.313 続・ハプバーと下ネタ(後編)
さて。前回のコラムでお約束したとおり、今回は「下ネタ」を
脳科学的な見地からアカデミック(?)に分析してみることにしましょう。
ぼくの友人である脳神経外科の先生は常々、
下ネタを人前で話すことが
脳に2つの良い効果をもたらす
…みたいなことを申しております。
まず、一つめの効果は
「ひらめく脳」の
下地づくりにもってこい!
…だということ。
下ネタとは、とどのつまりが
「普通のなにげないひと言を違う視点で捉えて、生殖器や性行為などを想起させる言葉や動作による表現に変化させること」
…であり、ひらめきのある敏感な脳じゃないと、そう簡単に思いつくものではありません。すなわち「下ネタを考える」ということは、
「新しいアイデアを捻り出す作業」
…と言い換えることができます。
また、「新しいアイデア」は無から突然ポンと出てくるわけではなく、すべてが「過去のアイデアの組み合わせ」や
「視点のズレ」から生まれまるもの──たとえば、どんなに腕の良い寿司職人がいても、カウンターのネタケースに魚がなければ寿司屋は開店できないように、「記憶」がなければ、新しいアイデアは発想できません。
そう!「新しいアイデアの捻出」とは、
側頭葉にある記憶(魚)をもとに、前頭葉(寿司職人)があらゆる工夫(組み合わせ)を凝らし、お客を満足させる仕事を行うこと
…と同じなのです。
なかでも「シモ絡みの記憶」は、寿司職人にとって
「決して高級ではないけど、脂が乗っていて丁寧に調理すれば美味しく食べられる」
…いわば鰯(イワシ)みたいな存在で、一流の寿司職人はこういった下魚からも常に刺激を受け、お店を繁盛させているのではないでしょうか。
二つめの効果としては、
「メタ認知」
…を鍛えることができる…とのこと。
「メタ認知」とは、
自身の思考・感情や周囲の状況を客観的に評価し、それをコントロールすること。
簡単に言ってしまうと
「自分の言動を
空の上から神様の目線で
見るようなこと」
…です。
申すまでもなく、下ネタは相手と場所を選びます。そもそも下ネタというのは、相当に高度な判断能力を要するものなんです。ですから
「こんなときにこんな話をしたら
周囲が凍りつくんじゃないか」
…というように、自己を客観的に評価する「メタ認知」が重要になります。「メタ認知」を上手に活用して、
クスリと笑えるような下ネタをタイミング良く話せる判断ができれば、その場を和ませることだってできるでしょう。
ぼくたち人間の「メタ認知」は、
脳の最前部にある前頭葉の、さらに前半分にある「前頭前野」
…が担っています。「前頭前野」は、人間がもっとも進化した部位で、他の動物と比べても人類が抜きん出て大きく発達しています。
下ネタを発言するときに、一番気をつけなければならないことは
「この話を聞いた人は
どう感じるだろうか?」
…といった発想を常に持つこと。思いつくまま節操なく口に出すのは、まったくもってよくありません。
好感度の上がる下ネタというのは、「メタ認知」を意識して、
理性的に振る舞いながら語るもの
…なのです。
ただ、一般論として下ネタは、やはり「下品」と見なされがちなので、好き嫌いが大きく分かれるのは仕方ありません。
福山雅治さんがラジオなどで好んで披露する下ネタも、福山さんだから許されるのではないでしょうか。
ぼくとしては、もしアナタが自身の話術に自信が持てないヒトならば…両刃の剣ともなりかねない危険度の高い下ネタより、
同様に「ひらめき」と「メタ認知」が必要となる
「おやじギャグ」
…を、むしろおすすめします。
おやじギャグなら、万一スベったところで相手を凍てつかせるだけで済みますが、センスに欠けた下ネタは、
下手すりゃ女性にとことん嫌われてしまう可能性もありますから…ね?